085894 ランダム
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SweetPain





「お馬さんが通る」

さあさ そこをお退きよ!
お馬さんが通る お馬さんが通る
パッカパッカ パッカパッカ
黄金の蹉跌を踏み鳴らし


ご覧よ 乞食娘もお通りだ!
歪んだ唇
ボロキレみたいな体して
馬糞まみれで歩いてる


許されてると思い込み
愛されてると思い込み
したり顔で
神の言葉を口にする
まるで
自分の言葉みたいに


ひとっつも「今」を生きてないから
馬糞まみれでも乞食娘は満足げさ
祝福されているのが
自分だと思い込んでる


幸せ者だね
全てが去っていくというのに
捨ててしまっているというのに
好奇と慈悲の目の区別もつかない

通る 通る
白くて立派なお馬さん
パッカパッカ パッカパッカ
花吹雪が
未知なる路を招いているよ


その後 歩く乞食娘
馬の尻しか見えてやしない


本当に
憐れな娘だよ


さあさあ!退いた退いた!
見世物じゃないんだよ!


撃ち殺しておしまい
撃ち殺しておしまい


あの娘を


見てるこっちが恥ずかしいんだよ


さあ!退いた!










「ループ」

それは
残酷なだけの
美しい物語で


閉じ込めた扉


頁を辿る指先を
ひりひりと
震えが駆け巡る


分散された振動


微かに
伝えて


震える
壊して。


旋回する 私
回遊する 物語


残酷なだけの 夢


ああ


誰か 止めて




私を止めて!!








「壊音」

過ぎ去りし日々の
勝手気ままな子宮の馬鹿騒ぎで
今日も日が暮れ


アタシは
処女のような顔をして
聖書の言葉を唱え


鏡としての役割を
淡々とこなす


すれっからしの魂に
大きなお腹の売春婦


ああ
神よ


束の間の正気に
雪 降り積もらせ




時計の始まりと終わり
それは
何かが終わる音




鏡には陰鬱な雲がうつり
アタシは
ただ 泣くしかなくて


広がりゆく狂気に
雪 降り積もらせ


流れゆくままに


ああ
神よ


流れ ゆくままに
眠らせたまえ


永遠にこの音を
聞くことがないように








「甘美」

いつだったか
何とも言えず
美しい人がいて


その人は


偶然なのか
必然なのか


猛烈な毒を持っていた



佇まい
古きの香り


まつげは
まるで
黒い羽のよう


しびれよじれる歪な痛み


甘美?


死に至る感覚
爪をかじりながら
笑顔で
牙をむく人


触れただけ でも 毒にまみれそうで

なのに 美しくて


覚えていないほど昔
そんな女(ひと)がいた


そう それは美しくて


近頃 この体に
あの人とよく似た
毒気を感じる


女?



ああ
汚らわしくて清らかだ




死に至る 感覚
笑顔で
牙を剥きながら


甘い毒 体に感じて








「強迫」

走れ 走れ ノロマよ 走れ
もう 追いつけないの
流れゆく景色だけでも 目が廻るの
無機質な機械の音でも 耳が割れそうなの


    でも
    急がなきゃ 詰め込まなきゃ


    どうして?


    私にも分からない


息つけば お尻を叩かれる
叩かれるのは 嫌
痛くて 涙が出る


狂ったように何かを考えてれば
お尻を叩かれないで済むのよ
だから
考えなくちゃいけないの


    怯えていれば
    もっと強く叩かれるわ


眠れ 眠れ 逃亡者よ 眠れ
もう そこしかないの
分かり合ったフリでも 心が裂ける
上辺だけのセリフでも 歯が疼いて仕方ないの


    それでもやっぱり明日は来るの?


    やっぱり来てしまうの


ずうっと眠ったままでいれば
何も考えないで済むのよ
だから
ここにしか居場所はないの


    夢すら見ないほど
    深い深い眠りがいいわ


ねえ
ここの回路は居心地が悪い
人は皆 私を少し おかしいと言うの


    鎖みたいな錠剤を
    飲んでることがおかしいの?


    それはおかしいことだと誰が決めたの?


ああ
そんな事より
息をして ご飯食べて 排泄してる限り
考えてなくちゃいけないのよ


    だって ずっと眠っていると
    目が溶けるような気がして
    目覚めたとき 寒くて


    とても寒くて


外灯すらない線路 脱線した電車
行く先も分からぬまま 走る


ここでは安らぎは要らないの
お金儲けの道具でしかないの


    怖い 怖いよ
    叩かれるのは 嫌
    強く迫るように考えさせて


    強く迫るように








「業火」

気狂い女の体が熱い
もうここにはいられない


気狂い女の心が腐る
全て焼き払ってしまえ


業火に包まれ
うたを産む


あの女には近づくな
さもなきゃお前が凍え死ぬ








「罪深い体」

火照る
疼く
疼く
火照る


罪深い体が
アンタで埋めてと吼えている


何も考えないで
髪の毛を掴んで
唇に喰らいついて


乱暴に掻き回してよ


何がなんだか解らないくらいに


痺れるような刺激が欲しいの


火照る
疼く
疼く
火照る


罪深い体が
アンタに暴れてと手招いている


獣並みの欲望を
私にぶつけて
息絶える寸前まで
貫いて壊して


少しでも愛なんて匂わせたら
その舌を噛みちぎってやる
二度とそんな馬鹿げたこと
口に出せないようにしてやるわ


やるんなら やってよ
そこまでやってよ


痙攣するほどの刺激が欲しいの


アンタはただ それだけの存在なの


わかる?


さあ 走りなさいよ
月明かり たてがみになびいて 銀の爪
泥だらけの体で 私を襲って


やるんなら そこまでやるのよ
中途半端は許さない


少しでも逃げ腰になったら
その大事なものを噛みちぎってやる
二度とそんなふざけたこと
出来ないようにしてやるわ


火照る
疼く
疼く
火照る


罪深い 衝動に駆られた この体


埋めて 埋めて 早く 埋めて


早く 走ってきて!








「赤い部屋」

この部屋には
私しかいないの
暖かいでしょ
そうね
ほんの少し動いているかも


貴方が動けば
部屋も動くわ
もっと暖かくなるかもしれない


首が絞まる?
嘘でしょ
そんな


少し 気が立っているだけよ


鍵は捨ててしまったから
安心して
もう二度と出られないから


ここで貴方は詩を奏でるの
その細い指で
部屋はきっと朱色に染まるわ


その代わり
死ぬまで此処からは出られないのだけど


嫌なの?
自由?
なに、それ


仕方がないから
その手を縛ってあげる
その目を潰してあげる


私の身体しか愛せないように


狂ってる?
誰のこと?


この部屋は私よ


おかしいのは貴方だわ


そうね もしかしたら貴方の言うとおりかも
でも残念!


鍵は捨ててしまったの
もう二度と出られないの


愛してなんかないわ
ただ
離したくないだけ


おかしいのは誰?


オカシイノハ アナタ ヨ








  「悩」

  指先から
  真っ二つに裂けてしまった


  飛び散った
  この小さな脳は
  何処へ?


  ばらばらな欠片が笑いかけるのよ


  灰色の空を
  私の粒子が飛んで行く


  繊細なものと
  壊れやすいものと
  醜いものの間を


  だれか探して
  私を探して


  手を招いている砂の道


  歯は全て抜けてしまった
  竜頭から二つに裂けてしまった


  ああ
  何処?


  私は
  何処へ?








「縛手」

放してあげたいの
じゃなきゃどうにかなりそうなの
意地悪で
悪戯な
この手


孤高の花びらを
全部摘みとる


どうせ私はつまらないメスだし


逃れられないくらいなら
きつくこの手を縛ってよ
ぎりぎりと
血が滲むほど


爪はもう切ってしまったの


だって


どうせ私はつまらないメスだし


掻きだしてあげたいの
じゃなきゃ戻れそうにないの
しなやかで
残酷な
この手


目に見えるもの全て塞ぐ


悪戯な
この手








「彼岸花」

騙されないわよ
そんなのいやよ
当たって 命中
もっと キスして
激しく キスして


          向こう見ずなの 貴方だけね
          何処まで行っても 平々凡々


          だめよ グチャグチャ
          ワタシ グチャグチャ
          もっと 迫って
          一途に 迫って


みっともないわよ
そんなのいやよ
この胸 命中


          彼岸花?


なんてことして
そんなことして


愛して頂戴
当たり前でしょ
丁度 熟れごろ
ワタシ 売りごろ


          向こう見ずなの 最初からね
          何処まで行っても 戦々恐々


          史上最強 ワタシの恋愛
          貴方はとうとう首ったけ


          武装解除の夢物語
          二人で地獄を覗きましょう


逃がさないわよ
逃げられないわよ


          爛れた地獄の彼岸花


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